コンテンポラリーダンスは意味不明ではない!映像からわかる魅力を解説!

CMやアーティストのMVでよく見るようになったコンテンポラリーダンス。
東京オリンピックの開会式では森山未來さんが、閉会式ではアオイヤマダさんが、それぞれコンテンポラリーダンスを披露してくださいましたね。
しかし、実際に見てみても、「コンテンポラリーダンスは難しい」と思ってしまった方は多いのではないでしょうか。
確かに、他のジャンルのダンスと違って、コンテンポラリーダンスの表現は難しいとされています。
それでも、歴史的背景や根底のテーマを知るだけで、とても魅力的に見えてくるのです。
今回は、そんなコンテンポラリーダンスの魅力を映像と共に解説していきます。
解説付きで映像を見ると、印象ががらりと変わるかもしれませんよ!

コンテンポラリーダンスとは


「コンテンポラリー」とは、「現代的な」という意味。
「時代の先端」を表しているとも言われています。
しかし、クラシックバレエやヒップホップダンスなどの他のダンスと違って、明確な基準や定義はありません。
むしろ、定義付けができないダンスこそ、コンテンポラリーダンス
振付家やダンサーが、それぞれの感性で新しいダンスを創作し、進化を続けているジャンルなのです。
そのため、作品毎にストーリー性の有無や抽象度は様々で、振り付けや表現方法に統一性はありません。
ただひとつ共通する点としては、ダンサーが「身体」を表現の核にしている点にあります。
身体の使い方ひとつで、あらゆる世界観を生み出しているのです。

コンテンポラリーダンスの歴史

15世紀にクラシックバレエが、20世紀にモダンバレエが誕生しました。
それぞれの確立と発展については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。


古典的なクラシックバレエの世界観を脱して、自由にあろうとしたモダンバレエは、より革新的なダンスとして育っていきました。
それが、モダンダンスと呼ばれます。
コンテンポラリーダンスの発祥のきっかけは、このモダンダンスに対して、新たなダンス活動を始めたことです。
1970年代のフランスでは、文化の地方化を推し進めるデサントラリザシオンという国策により、芸術に対して大規模な予算が組まれました。
その一環として設置された現代舞踊団が反バレエ的なダンスを踊るようになり、それがヨーロッパ、アジア、中東へと広まっていったのです。
そのダンスこそ、コンテンポラリーダンスと呼ばれ、それぞれの国の文化や特色を取り入れた革新的なダンスとして世界中に広まっていきました。
現在では、新しい表現方法を追求する振付家やダンサーが多く生まれ、舞踊だけでなく、舞台美術、音響、照明にこだわり、IT技術を活かした映像などを導入するようになっています。

コンテンポラリーダンスは意味不明?


初めてコンテンポラリーダンスを見た方たちから、「コンテンポラリーダンスって意味がわからない!」という言葉をよく聞きます。
さきほどもお伝えしたとおり、自由な表現を重視するのがコンテンポラリーダンス。
特徴や形式を一言で語ることができないからこそ、そのダンスは抽象的なものになります。
ストーリー性やわかりやすい表現をするダンスに慣れている人々にとっては、コンテンポラリーダンスとは、まさに未知の領域とも言えるのです。
また、日常生活では見ることのない動きを取り入れている点も、意味不明と言われてしまう理由のひとつでしょう。
複数人で絡み合ったり、布を使ったり、紙を破いたりする表現は、コンテンポラリーダンス特有の動きです。
現在では、様々な革新的なダンスがコンテンポラリーダンスと呼ばれているため、以下のパフォーマンスも、このジャンルに括られることが多くなっています。

コンテンポラリーダンスとされるパフォーマンス
  • ドイツ:タンツ・テアター
  • 日本:暗黒舞踏
  • シルク・ドゥ・ソレイユなどのヌーボーシルク(現代サーカス)
  • 現代ITを駆使した映像などを使ったパフォーマンス
  • ストリートダンス
  • 各国のエスニック・ダンス
  • 武道の形

コンテンポラリーダンスが苦手な日本人は多い

世界中に浸透したコンテンポラリーダンスですが、コンテンポラリーダンスに苦手意識を持つ日本人は多いようです。
それは何故でしょうか?

理由のひとつとして、「自由な表現をすることに慣れていない」ということが考えられます。
日本人の特性として、幼い頃から「みんなと同じである」ように求められてきたため、オリジナリティのあるものを即興で作り出すことに慣れていません
小中学校の体育で「ダンス」の授業が必修化されましたが、子どもたちの中には、人前で踊ることを恥ずかしく思う子がいるようですし、テレビやインターネットでダンスが身近になってきたとはいえ、文化として根付いた特性はなかなか変わらないようです。
そのため、日本人にとって、「自由にダンス踊ること」も、「自由な表現をされたダンスを見ること」も苦手になってしまったのかもしれません。

コンテンポラリーダンスの魅力

では、どうしたらコンテンポラリーダンスを好きになれるでしょうか?
そのために、「誰でも芸術を感じる」ことができるという、コンテンポラリーダンス最大の魅力をご紹介します。

人間は、それぞれ自分だけの感性を持っていますよね。
たとえ踊ることができない人でも、「カッコイイ」「カワイイ」「惹きこまれる」「もっと見ていたい」などなど、ダンスを見ているだけで、たくさんの感想を持つはずです。
コンテンポラリーダンスは、その感性に訴えてきます
アーティストたちは、型に収まった動きでは伝えられない想いを、観客側にぶつけてきているのです。
喜び、怒り、悲しみなどの感情であったり、自然に生きる動物や植物を描いているかもしれません。
それを見た人たちがどう感じるか。
そこまでの過程を含めた芸術こそが、コンテンポラリーダンスなのです。
「これは一体何を表現しているのだろう?」と考えながら、心に響いてきたものを素直に感じてみてください
表現によっては受け入れられないこともありますが、感性が違うのですから、それは当然です。
どう思うかは人それぞれであり、正解も不正解もありません。
「このダンスは自分には合わなかったな~」くらいの気持ちで、また新たなコンテンポラリーダンスを見ると、ビビッとくるダンスに出会えるかもしれませんよ。

コンテンポラリーダンスとバレエの違い

コンテンポラリーダンスについてご紹介してきましたが、クラシックバレエとは、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
表にしてまとめたので、ぜひ見比べてみてくださいね。

コンテンポラリーダンス クラシックバレエ
意味 現代的 古典的
定義 なし あり
メソッド なし あり
重要視されている点 それぞれの感性を観客に伝えること 厳格な規律の中での華やかな美しさ
テクニック あらゆるダンスのテクニックを取り入れている バレエ特有のテクニックのみ
物語性 ないものが多い あり
自由度 高い
ダンサーや振付家の自由
低い
演目によって定められている
表現するもの ダンサーや振付家独自の世界観
身体の内側から沸き上がる感情や自然に生きるもの
幻想的な世界観
登場人物の感情の表現
音楽 様々なジャンル
振付家が自由に決める
あらかじめ決まっている
振付家も変えられない
衣装 ユニタードなどの動きやすいもの チュチュ
ヘアスタイル 自由 シニョン
自由 トゥシューズかバレエシューズ

コンテンポラリーダンスの振付家と代表作


現在、ヨーロッパのバレエ団を中心に、コンテンポラリー作品が積極的に上演されています。
ここまでメジャーなダンスとなるまでに、数多くの振付家が新たな表現を目指して、たくさんの演目を作り出してきました
その中でも、覚えておきたい有名な振付家と代表作をご紹介します。

ジェローム・ロビンズ

アメリカン・バレエ・シアターでダンサーとして活躍していたロビンズ。
1944年、『ファンシー・フリー』という作品で振付家としてデビューすると、瞬く間に注目を浴びました。
ブロードウェイでも振り付けを担当し、『王様と私』『ウエスト・サイド・ストーリー』『屋根の上のバイオリン弾き』など、トニー賞を受賞するような大ヒット作を創作。
ミュージカル化や映画化に至る作品を数多く手掛けたロビンズの作風は、陽気で明るい物語バレエを特徴としています。

『ウエスト・サイド・ストーリー』

シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』にインスピレーションを受けて描かれた作品。
当時のニューヨーク社会を背景としており、2つの少年非行グループの闘争と、そこに巻き込まれる2人の男女の恋をミュージカルで描いています。
1957年にミュージカルで初演を経た後、1961年に一度映画化され、2021年に再び映画化されました。
初演の際には、キャストのほとんどに無名の新人を抜擢していたそうです。
日本では、『ウエストサイド物語』のタイトルで、宝塚歌劇団と劇団四季によって公演されています。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=hoQEddtFN3Q)

ローラン・プティ

パリ・オペラ座バレエ団在団中から振り付けを始め、注目を浴びていたところ、バレエ・リュスに参加していた若者たちとの出会いを機に退団しました。
自由な創造の場として、バレエ・デ・シャンゼリゼを結成するためです。
ダンサーと振付家を兼ねて活躍したプティは、1948年にパリ・バレエを主宰し、『若者の死』『カルメン』と言った作品を成功させます。
1950年代に入ると、ハリウッドへも活躍の幅を広げ、『アンデルセン物語』や『足ながおじさん』などの振り付けを担当しました。
プティは個人的に好んでいたアメリカの映画、ジャズなどの要素を取り入れ、オリジナルの作品から古典作品の新解釈まで手掛けています。
バレエをショービジネスとして身近なものにしたプティの作品では、オシャレな衣装を身につけたダンサーが様々な小道具や装置を使いました。
羽根飾り、扇子、煙草、鏡、椅子、階段などは、その代表的な例です。

『若者と死』

美女の姿を模した死神に翻弄された若者が、死に至るまでを描いた作品です。
「死」を象徴する美女が、「生」の象徴たる若者を追い詰めていく姿に、「生」と「死」の意味を深く考えさせられます
1946年にバレエ・デ・シャンゼリゼで初演された後、1985年公開の映画『ホワイトナイツ』の冒頭シーンでミハイル・バリシニコフによって踊られたことで、世界的な有名作となりました。
この際、プティは、映画のために改めて振り付けたそうです。
日本では、熊川哲也さん、及びKバレエカンパニーのレパートリーに入っています。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=bp2fMcPlG0M)

『カルメン』(プティ版)

1845年にフランスの作家・メリメが発表した小説を元に、1875年に作曲家・ビゼーが作り上げたオペラを、1949年にプティがバレエ化した作品。
主役の男女、兵士のホセとジプシーのカルメンの恋物語です。
真面目なホセと自由奔放なカルメンが惹かれ合い、擦れ違い、最後にはホセが自らの手でカルメンを殺してしまうまでを描いています。
第三場の「寝室のデュエット」は特に有名で、ガラ・コンサートなどで単体で踊られることも多いです。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=Zo-EWAOdptA)

『ノートルダム・ド・パリ』

1831年に作家・ユーゴーが発表した、『ノートルダムのせむし男』の邦題でも知られる小説を、1965年にプティがバレエ化した作品。
同じ小説を原作としたディズニー映画の『ノートルダムの鐘』も有名ですね。
とはいえ、ディズニー版はハッピーエンドで終わりますが、原作、及びバレエ版はそうではありません。
コンクールや発表会でよく見られるヴァリエーションでもお馴染みのエスメラルダが、3人の男性から想いを寄せられ、その狭間に立たされた後、彼らの行動により死に追いこまれてしまうというストーリーとなっているのです。
15世紀のパリの舞台背景にある魔女狩りなどの弾圧、外見による差別、愛や嫉妬が、色濃くダイナミックに表現されています。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=olBTd7FSxyo)

モーリス・ベジャール

第二次世界大戦中にフランスのマルセイユでバレエを始めたベジャールは、マルセイユのバレエ団にコール・ド・バレエとして入団しました。
終戦後の数年間は、ダンサーとして、ガラ公演やツアー公演に参加。
プティと共演したこともありました。
自身が初めて振り付けた『小姓』を1946年に発表してからは、振付師としても活躍。
1959年には、バレエ・リュスに委託され、ニジンスキーの振り付けた『春の祭典』のベジャール版の初演を成功させました。
エトワール・バレエ団、ベジャール・バレエ・ローザンヌ、ルードラ・バレエスクール、カンパニーMなどの創設をし、バレエ界の発展に大きく貢献した人でもあります。
ベジャールの作品には、儀式的な演出が多く使われており、哲学者の父を持つ彼ならではの独特な美学が、随所に表れているかのようです。

『ボレロ』(ベジャール版)

1928年にフランスの作曲家・ラヴェルが書き上げたバレエ曲で、一定のリズム進行が続く独特な曲調となっています。
ベジャールが振り付けたバージョンが最も有名で、1981年公開の映画『愛と哀しみのボレロ』の作中でジョルジュ・ドンが踊ったことで、さらに知名度を上げました。
シルヴィ・ギエムの代表作としても知られています。
赤い円卓の上で情熱的な踊りを披露するソリストの周りを、コール・ド・バレエが取り囲むように踊る振り付けです。
ベジャールの意向により、ベジャールが振り付けた『ボレロ』を踊れるダンサーは世界でも数名だけ
そのひとりに、日本人の女性ダンサー、上野水香さんがいらっしゃいます。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=WZPnI9V-vdI)

『ザ・カブキ』

歌舞伎の演目『仮名手本忠臣蔵』を題材にした作品で、東京バレエ団に提供するために振り付けられました。
現代の東京から『忠臣蔵』の世界にタイムスリップした青年が、『忠臣蔵』の主人公の人格と重なり合っていきます。
やがて仇討ちを成し遂げた主人公たちは、彼が率いる47人揃って切腹するというクライマックスへと向かっていくのです。
1986年に初演を迎えた直後は、一部から「安易なジャポニズム」との批判が見られましたが、ベジャールが日本文化に精通していることが作品に色濃く表れていたため、否定的な意見よりも、肯定的な意見の方が多く見られました。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=CXkYGQfb4io)

『M』

日本の作家・三島由紀夫の生涯を描いた作品。
こちらもベジャールが東京バレエ団のために振り付けました。
『M』とは、「三島」の頭文字であると同時に、

Mとは生の象徴である la Mer(海)、さらに la Mythologie(神話)、la Metamorphose(変容)、la Mort(死)をも意味する。
(引用元:東京バレエ団公式ホームページ)

とのこと。
「イチ」「ニ」「サン」「シ」という、4人の三島の分身が登場し、数々の三島文学の世界を鮮やかに彩っていきます
そして、「死」を表す「シ」が、三島を死へと導いていくのです。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=HbPV8dHtIGs)

ジョン・クランコ

若い頃から振付家を志していたクランコは、ニネット・ド・ヴァロワに認められるほどの才能を持っていました。
1947年に『別れ』、1949年に『美女と野獣』といった短編の物語バレエで成功を収め、23歳でサドラーズ・ウェルズ・バレエ団の常任振付家に就任。
クランコ版の『ロミオとジュリエット』などを成功させたことがきっかけとなって、シュトゥットガルト・バレエ団を世界的なカンパニーへと成長させました。
生涯を通して90作以上のバレエ作品を作り上げましたが、中でも高い評価を受けているのは、『オネーギン』や『じゃじゃ馬馴らし』などの「物語バレエ」です。

『オネーギン』

19世紀のロシアを舞台にした、田舎娘のタチヤーナと帝都育ちの青年オネーギンの恋物語です。
オネーギンに送った恋文を目の前で破かれてしまったタチヤーナを見て、タチヤーナの妹の恋人・レンスキーは、友人オネーギンに激怒。
諍いの後、決闘となり、オネーギンはレンスキーを撃ち殺してしまいます。
数年後、タチヤーナと再会したオネーギンは、自身が彼女に恋をしていたことに気付き、恋文を送りますが、既に結婚していたタチヤーナは、淡く残った恋心を認めつつも、その恋文を破るのでした。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=T4u5REbycd4)

ロシアの作家・プーシキンの小説『エフゲニー・オネーギン』に基づいたストーリーを、チャイコフスキーの『四季』などの楽曲に乗せて描いた作品。
1965年に初演されて以降、シュトゥットガルト・バレエ団の看板作品となりました。

『じゃじゃ馬馴らし』

シェイクスピアの戯曲『じゃじゃ馬馴らし』をバレエ化した作品。
金に目の無いペトルーチオが、じゃじゃ馬な富豪の娘キャタリーナと結婚し、従順で理想の花嫁へと馴らしていくというストーリーです。
主役ふたりのパ・ド・ドゥが全部で3つあり、それぞれを比較すると、夫婦の関係性の変化がよく見えてきます
シェイクスピアの饒舌な長台詞を、すべてマイムとアクションで表現している演出に、笑いが止まらなくなることでしょう。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=NCVagZvc3Z4)

ケネス・マクミラン

ダンサーとして将来有望とされたマクミランですが、舞台恐怖症というスランプに陥ってしまいます。
そこに声を掛けたのが、同僚のクランコ。
彼が振付家としての道を勧めたことが功を奏し、マクミランは批評家たちの注目を集めました。
マクミランの作品には「ミューズ(舞踏を司る女神)」とも言える女性ダンサーがおり、彼女たちの官能美とドラマティックなストーリーを合わせることで、ヒロインの愛と死を描き出します

『マノン』

フランスの作家・プレヴォーが1731年に発表した『マノン・レスコー』を題材にした作品。
男性の目を惹く美貌と奔放さを兼ね備えた少女マノンが、自らの行いが仇となり、死んでしまうまでを描いています。
夫となる青年デ・グリューとの「出会いのパ・ド・ドゥ」、駆け落ちをして幸せいっぱいの「寝室のパ・ド・ドゥ」、心身共に疲れ果て、夫の腕の中で息絶える「沼地のパ・ド・ドゥ」は、すべて難易度が高いと言われるほどの見応えです。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=r9huA5ift5c)

『マイヤリング/うたかたの恋』

1889年に実際に起きたマイヤーリング事件を映画化した『うたかたの恋』をバレエ化した作品。
オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフが、愛人のマリー・ヴェッツェラと心中するまでの最期の8年間を描いています。
それぞれの幕の最後に、ルドルフがパ・ド・ドゥを踊りますが、そのパートナーは1幕と2幕・3幕では、別の女性です。
1幕では、政略結婚の相手であり、正妻であるステファニー皇太子妃。
2幕・3幕では、愛人のマリー・ヴェッツェラ。
ルドルフが徐々に破滅へと追い込まれる様を段階的に表現しています。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=AQ6wSf6MjRM)

ジョン・ノイマイヤー

ベジャールと親交が深く、クランコの弟子でもあったノイマイヤーは、ロイヤル・バレエ・スクールでバレエを学んだ後、シュトゥットガルト・バレエでダンサー兼振付家として活躍。
後に、ランクフルト・バレエやハンブルク・バレエの芸術監督に就任しました。
ノイマイヤーの作品は、古典バレエを再解釈したもの、文学作品をバレエ化したもの、音楽作品に振り付けたものの、主に3つに分類されます。
代表作としては、1つ目には、ノイマイヤー版の『くるみ割り人形』『幻想 ~”白鳥の湖”のように』が、2つ目には、『椿姫』『ヴェニスに死す』『欲望という名の電車』が、3つ目には、『マタイ受難曲』『マーラー交響曲第3番』『冬の旅』が挙げられます。
どれも優れた緩急の上に、複雑で緻密な心理描写を表現しているのが特徴です。
しかし、その特徴について「重層的な物語だ」と肯定的に受け止める者もいる半面、「物語を詰め込み過ぎだ」と否定的に受け止める者もおり、評価が分かれることもあります。

『椿姫』

原作は、通称・小デュマが1848年に発表した『椿姫』。
音楽には、原作と同時代の作曲家・ショパンの楽曲が採用されました。
19世紀のパリを舞台にしており、青年アルマンが高級娼婦マルグリットと出会うところから、マルグリッドと死に別れるまでを描いています。
劇中劇として、マクミランの『マノン』を使用することで、マノンとマルグリットの心理を重ね合わせ、奥深さを感じさせているのです。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=g1Pcv13z9nk)

『月に寄せる七つの俳句』

ノイマイヤーが東京バレエ団のために振り付けしたオリジナル作品で、1989年に初演されました。
題材は、松尾芭蕉や小林一茶など、日本を代表する俳人が「月」を詠んだ俳句。
そこに、バッハやペルトなどの西洋を代表する作曲家の楽曲に合わせています。
作品の節目に俳句が朗読されていくのが特徴です。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=SM9DPxdjk0o)

イリ・キリアン

1986年にシュトゥットガルト・バレエに入団したキリアンは、クランコに弟子入りし、振付家としての才を高めていきます。
1970年に『往来』を振り付けしてから、現代音楽を使用した作品を数多く発表しました。
ネザーランド・バレエ・シアターでは芸術監督にも就任し、このバレエ団のために50作以上も手掛け、世界的バレエ団への成長の後押しをしています。
キリアンは、モダンダンスのメソッドをバレエに融合させることで、新たな表現を取り入れました
アクセントのある波打つような動きは、身体の曲線美を強調し、美しく見せています。

『シンフォニー・イン・D』

ユーモアに溢れた作品で、随所に笑いを呼びます。
バレエではあり得なかった奇妙で滑稽な動きが数多く取り入れられているため、ダンサーはかなりのテクニックが要求される作品でもあります。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=-a_8lN2VzgY)

『小さな死』

モーツァルトの楽曲に合わせて作られた作品です。
男性ダンサーと女性ダンサーが、それぞれ6人ずつ登場してシーンを繋いでいきます。
この作品で目を惹くのは「剣」。
西洋式のフェンシングのような剣を、足で転がしたり、足で持ち上げて掴んだり、女性を抱え込んだりと、小道具としての特性が十二分に発揮されています
キリアンの目指す「詩的でエロティック」という表現を出すために、衣装のシンプルさを効果的に扱っているのでしょう。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=PspxMfLVn2M)

ウィリアム・フォーサイス

シュトゥットガルト・バレエ団でダンサーとして入団した後、新人振付家として『ウルリヒト』を発表したフォーサイスは、数多くのモダン作品を発表します。
1980年代に入り、『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』が世界的な人気を博しました。
ダンサーたちは、フォーサイスの作品を踊るとき、即興性の高さと、複雑で難易度の高いテクニックを必要とされます
従来のバレエには無かった、素早く連続的な動きに魅了された観客は少なくありません。
また、コンピューターを用いて最先端の舞台芸術を利用した表現が高い評価を受けるようになりました。

『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』

3人の男性ダンサーと、6人の女性ダンサーが、バレエのテクニックを駆使して舞台上を跳び回る作品です。
ストーリー性はほとんどありません。
トゥシューズを履きながらも、足から頭までの軸を真っ直ぐにしない「オフバランス」を多用しているため、とてもアンバランスに見えるのが特徴的。
シルヴィ・ギエムが「なんて振り付けなの!」と驚くほどに革新的だったようです。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=KatKXpyds6I)

MVで見るコンテンポラリーダンス


数多くの傑作を残した振付家と代表作を見ていくと、彼らが起こした革新的なダンスが、現在のコンテンポラリーダンスの多様性に繋がっていることがわかります。
日本でも、コンテンポラリーダンスのダンサーが増えてきており、メディアで取り上げられることも多くなりました。
次に、コンテンポラリーダンスを扱っているアーティストのミュージックビデオを見ていきましょう。
身近な映像からコンテンポラリーダンスを見てみると、また新たな一面が見つかるかもしれません!

星野源 『夢の外へ』

ダンサーは、星野さんが以前から好きだったという井手茂太さん。
ダンスカンパニー「イデビアン・クルー」を主宰しています。
アーティストとのコラボレーションだけでなく、演劇作品の演出、CMの出演なども積極的に行なう井出さんの振り付けの特徴は、ダンススタイルに囚われないこと。
日常の身振りを活かしています。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=k75GLjixDAs&t=2s)

Sia 『アライヴ Feat. 土屋太鳳 / Alive Feat. Tao Tsuchiya』

ダンサーは、人気女優の土屋太鳳さん。
3歳からバレエを学び、大学では舞踏学を専攻していました。
女優ならではの演技力と、努力で積み上がった身体能力が引き出されています。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=Q6pTQd24iLs&t=2s)

米津玄師『LOSER』

米津玄師さんが自ら踊るMVです。
米津さん独特の世界観と曲調にマッチした振り付けになっていますね。
しかし、実は、米津さんはダンス初心者。
最初に設定してあった振り付けが踊れなかったため、フリースタイルで踊ることにしたのだとか。
米津さんの想いが存分にこもっている振り付けなのです。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=Dx_fKPBPYUI)

欅坂46『不協和音』

人気アイドルグループの櫻坂46がコンテンポラリーダンスに挑戦したMV。
センターの平手友梨奈さんが、他のメンバーと異なる動きをすることで、タイトルの「不協和音」を表現しているとのこと。
感情が爆発するような振り付けは、まさにコンテンポラリーダンスそのものと言えるでしょう。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=gfzuzDrVRVM)

清原果耶『君に見せる景色』

女優の清原果耶さんが初めてリリースした『今とあの頃の僕ら』のカップリング曲のMV。
「過去との決別」をテーマに、清原さんの現在と未来を表現しています。
過去を認め、前を向いていく力強さが滲み出ている振り付けですね。


(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=CL6o96MESPg)

コンテンポラリーダンスに関するQ&A


ここまで、コンテンポラリーダンスの特徴や代表作などをご紹介してきました。
コンテンポラリーダンスの魅力を感じられたでしょうか?
しかし、実際に始めるためには、現実的な情報が足りないと思います。

ここからは、「コンテンポラリーダンスを始めたい!」という方からよく聞く質問にお答えしていきます!

Q.|コンテンポラリーダンスを始めるにはどうすればいい?

A.|コンテンポラリークラスに通う

西洋に比べてコンテンポラリーダンスが浸透していない日本では、学ぶ機会が少ないことは確かです。
しかし、ダンス教室によっては、コンテンポラリーダンスのクラスもありますので、お近くのダンス教室を探してみることをオススメします。
その際、講師の選び方には注意してください。
ベースとなっているダンスが、バレエだったり、ストリートダンスだったり、演劇性が高かったり、抽象的だったり…。
自分がどのようなダンスに惹かれるか感じてみてくださいね。
また、どうしてもコンテンポラリークラスが見つからない場合は、クラシックバレエ教室で習うと、基礎が身に付くことでしょう。

Q.|コンテンポラリーダンスが上達するポイントは?

A.|様々なジャンルのダンスを見る

コンテンポラリーダンスを身に付ける上で、最初につまずくポイントのひとつに、「自由に身体を動かせない」という点が挙げられます
それを克服するには、コンテンポラリーダンスだけでなく、バレエ、ミュージカル、歌舞伎など、様々なジャンルのダンスを見てみてください。
舞台に観に行けなくとも、YoutubeやBlu-rayなどで観られるはず。
たくさんのダンスの技術や表現を知ることは、絶対に自身の糧になります。
また、インプットした後は、アウトプットするのも忘れずに。
発表会、フェスティバル、イベントなど、積極的に人前に出て踊ってみてくださいね。

Q.|コンテンポラリーダンスの衣装って?

A.|ユニタードが多い

コンテンポラリーダンスでは、様々な衣装を使いますが、身体の線を見せることで、表現の奥深さを引き出すことが多いので、ユニタードがよく使われます。
ストレッチ素材で動きやすいことも、使われる理由のひとつでしょう。
男性は、白いTシャツにタイツを履くことが多いです。
また、コンテンポラリーダンスの特徴として、衣装も演出のひとつとなりますから、演出家・振付家の意向を汲んだ衣装が選ばれます。

まとめ


「コンテンポラリーダンスは意味不明ではない」と思っていただけたでしょうか?
「少しはわかった気がする」と思った方もいれば、「それでも意味不明だ」と思った方もいらっしゃると思います。
それも当たり前。
コンテンポラリーダンスは、人によって解釈が違うため、理解できないことも、またひとつの答えなのです。
しかし、ひとつのコンテンポラリーダンスを見て、「わからない」と思ってしまっても、「他のコンテンポラリーダンスもわからないだろう」と決めつけないようにしてください。
世界には、様々なコンテンポラリーダンスが生まれ続けています。
その中のひとつだけでは、コンテンポラリーダンスを語ることはできないのです。
まずは、この記事にリンクした映像で、コンテンポラリーダンスを知るきっかけの一歩を踏み出してくださいね。