「モダンバレエ」という言葉を聞いたことはありますか?
「バレエ」と言うと、可愛らしいチュチュを身に纏い、トゥシューズを履いたバレリーナが舞台を美しく跳び回る「クラシックバレエ」を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、バレエを踊る女性が、全員トゥシューズを履いて舞台に立つとは限りません。
「モダンバレエ」のバレリーナは、裸足で踊ることもあるのです。
ただ、この違いが生まれた当時の人々にとって、ダンサーが裸足で踊るなど前代未聞の出来事。
モダンバレエは、バレエ界の常識を覆したと言えます。
今回は、革命的なモダンバレエの歴史や、その発展に関わった人たちを紹介しながら、クラシックバレエとモダンバレエの違いについて解説していきます。
モダンバレエならではの魅力を見つけてくださいね!
モダンバレエとは
モダンバレエの大きな特徴は、「自由」であること。
衣装も、靴も、表現すらも、すべて自由。
しかし、デタラメに踊っているというわけではありません。
クラシックバレエでは絶対に取り入れることのできない動きを用いることで、より豊かな表現を求めたのです。
モダンバレエの歴史
バレエの起源は、15世紀にまで遡ります。
「古典的な」クラシックバレエは、長い歴史をかけて作り上げられました。
一方で、モダンバレエはクラシックバレエから枝分かれしたように発展し、クラシックバレエとは全く違う「現代的な」バレエを指すようになったのです。
ここからは、モダンバレエが作られた経緯について解説します。
クラシックバレエ誕生までの歴史は、「クラシックバレエ」の記事にまとめてあるので、両方読むと、理解が進むこと間違い無しです!
モダンバレエの始まり
20世紀に入ると、チャイコフスキーの3大バレエ『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』を振り付けたマリウス・プティパの時代も終わりを告げます。
すると、クラシックバレエに反対する者たちが現れました。
その中のひとりが、ミハイル・フォーキンです。
彼は、イザドラ・ダンカンがトゥシューズを脱ぎ捨て、裸足で踊る姿を見て衝撃を受けました。
そして、彼女のために、クラシックバレエには無い新しい動きや民族舞踊からインスピレーションを受けた振付を施したのです。
これが、モダンバレエの始まりと言われています。
バレエ・リュス
「バレエ・リュス」とは、モダンバレエを世に広めた革新的なバレエ団のこと。
古典的なクラシックバレエの世界に不満を抱いた者が多く参加していました。
これを率いていたのは、セルゲイ・ディアギレフというプロデューサー兼芸術監督。
才能のある者を見出すのを得意としたディアギレフが集めた振付家やダンサーたちによって、バレエ・リュスは革新的な作品を次々に発表します。
今までに無い斬新なステップ、官能的な表現、自由な衣装や靴、作品毎に違う構成や雰囲気…。
観る者に衝撃を与え、そして魅了しました。
まさに、バレエの歴史を変えた出来事と言えます。
特に、1912年、ヴァーツラフ・ニジンスキーが振り付けた『牧神の午後』は、バレエ・リュスによる革命を決定的なものとしました。
バレエ・リュスは、ロシアからフランスに拠点を移し、ヨーロッパに進出するほどに成功を遂げたのです。
その後、ディアギレフの弟子であるフォーキンとニジンスキーが、形式を重んじたバレエから、物語の内容を重視するバレエを創作。
バレエ・リュスは更なる人気を誇りました。
しかし、1929年、ディアギレフが急死してしまったことで、バレエ・リュスは解散してしまいます。
ただ、バレエ・リュスで活躍した振付家やダンサーたちは、それぞれ世界へと散り、その地でバレエを根付かせ、発展させていくのです。
現在のモダンバレエ
現在のバレエは「クラシックバレエ」「モダンバレエ」「コンテンポラリーダンス」という3つに大きく分けられます。
バレエ・リュス解散後も、たくさんの振付家やダンサーたちが登場し、数々の作品を発表しましたが、その表現の幅は広く、どのジャンルに値するか、一口に語ることはできなくなっているのです。
そのため、いま活躍しているバレエ団は、それぞれ得意なジャンルも違いますし、どのジャンルの作品を多く上演しているかも変わります。
しかし、どのジャンルもそれぞれに愛され、現在も発展を遂げているのです。
モダンバレエとクラシックバレエの違い
ここまで、簡単にモダンバレエの歴史を紹介してきましたが、「モダンバレエとクラシックバレエの違いがよくわからない…」という方もいると思います。
それぞれの特徴を表にまとめましたので、違いを見比べてみてくださいね。
モダンバレエ | クラシックバレエ | |
---|---|---|
意味 | 現代的 | 古典的 |
重要視されている点 | 個性的で自由な表現の追求 | 厳格な規律の中での華やかな美しさ |
振付 | 型に囚われない 振付家が決めた振付を踊る 内股になる振付がある 回転や跳躍が無いこともある 民族舞踊の要素を取り入れた |
型が決まっている 踏襲された振付を踊る 脚は常に外に開く(アン・ドゥオール) 回転や跳躍は必ず取り入れる |
物語性 | なし 抽象的で独創的なものが多い |
あり 劇的な展開が多い |
感情の表現 | 大きい 官能的 人間の深層心理を表現 |
小さい 幻想的 |
音楽 | 様々なジャンル 振付家が自由に決める |
決まっている 振付家も変えられない |
衣装 | レオタード ユニタードなど様々 装飾を取り除いている |
ロマンティック・チュチュ クラシック・チュチュ きらびやかな装飾が施されている |
ヘアスタイル | 自由 | シニョン |
靴 | 裸足 スニーカー ヒール バレエシューズ トゥシューズ |
トゥシューズ バレエシューズ |
細かく見ていくと、たくさんの違いがありますね。
しかし、いざバレエを始めようと思っても、どちらを選べば良いかわからなるかもしれません。
その参考として、子ども向け、大人向け、それぞれへのメリットとデメリットを加味して、オススメのジャンルがどちらかを紹介していきます。
ただし、あくまで参考であることをお忘れなく!
子どもが習うならどっち?
A.|クラシックバレエ
バレエの基礎はクラシックバレエにあります。
身体の使い方を子どものうちから身に付けることは、所作や姿勢を美しくするだけでなく、忍耐力、感性、芸術性などの様々な力を養うことに繋がります。
たとえ、将来バレエダンサーという職業につかなくても、バレエを習って得た経験は、一生ものの宝物となるはず。
また、モダンバレエの自由さを先に経験してしまうと、クラシックバレエの枠の中での動きが窮屈に思えてしまう可能性もあります。
バレエをする上で欠かせない基礎を大事にしたいと考えるなら、最初はクラシックバレエを習うことをオススメします。
大人が習うならどっち?
A.|モダンバレエ
モダンバレエには、正解が存在しません。
そのため、振付家の意図を汲み取ったり、動きひとつひとつが何を表現しているか考えたり、どのような表現をすれば観る人に伝わるか追求することが必要になります。
「自由」であることは意外と難しいのです。
与えられた振付を踊るだけでなく、そこに意味や表現を見出すには、ある程度の精神的な成熟が求められます。
この点、モダンバレエは大人向きであると言えるでしょう。
モダンバレエを形作った振付家と代表作
バレエ・リュスに関わった振付家は、モダンバレエの先駆けとも言える作品を数々発表しました。
その中でも、特に知っておきたい3人の巨匠と代表的な作品をご紹介します。
ミハイル・フォーキン
バレエ・リュスの初期の頃の作品を手掛けたのがミハイル・フォーキンです。
コール・ド・バレエの用い方に異を唱え、民族舞踊の要素を取り入れた振付に仕立てました。
そのロシアの風土を感じさせる踊りは、ヨーロッパの人々にとっては異国情緒溢れる革新的なものとして受け入れられたのです。
『韃靼人の踊り』
プチーヴリのイーゴリ公とポロヴェツのコンチャークの争いの渦中。
イーゴリは遠征に失敗し、息子共々ポロヴェツの捕虜となってしまいます。
しかし、コンチャークは、イーゴリのことも息子のことも丁重に扱ってくれたのです。
それは、「イーゴリが戦から手を引くならば自由にする」ということを示すため。
そのもてなしとして、コンチャークは、自らの支配下にあるポロヴェツ人(韃靼人)に踊りを披露させたのです。
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=FFaDNB73q-M)
ロシアの作曲家、アレクサンドル・ボロディンが作曲した、オペラ『イーゴリ公』の第2幕の曲。
これをバレエ・リュスが取り上げ、バレエとして仕立てました。
男性がコール・ド・バレエとなって踊る激しさは、当時の人々に強い印象を残し、解散まで踊り続けられるほど、バレエ・リュスの代表作となったのです。
『シェヘラザード』
アラビアのとある国のシャリアール王は、ゾベイダという王妃だけでなく、女奴隷たちをも取り囲んだハーレム状態。
そんなとき、国王が弟と狩りに出掛けると言ってその場を離れます。
ゾベイダたちは、ようやく解放されたとばかりに喜び、男奴隷たちの閉じ込められた鍵を入手。
その場は歓喜に包まれ、ゾベイダはお気に入りの男性であった金の奴隷との逢瀬に夢中になります。
しかし、そこにシャーリアル国王が戻って来てしまいました。
実は、国王と王弟は、ゾベイダの裏切りの真偽を確かめるために、狩りへ行くと嘘をついていたのです。
すべてを見ていたシャーリアル国王は激怒。
金の奴隷や、他の者たちをも殺してしまいました。
すると、絶望に暮れたゾベイダは、短剣で自らを殺めてしまいます。
そうして、国王は、愛するゾベイダの命さえも失ってしまうのでした。
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=6-VlVzd4oR4)
ヨーロッパ中を虜にした「千夜一夜物語」の冒頭に登場するエピソードを、作曲家のリムスキー・コルサコフが『シェヘラザード』という交響曲に書き上げました。
シェヘラザードとは、「千夜一夜物語」で語り部をした女性の名前。
コルサコフが「千夜一夜物語」からインスパイアを受けていることが一目瞭然ですね。
彼の死後、バレエ・リュスによって振付されて、バレエの『シェヘラザード』が誕生しました。
初演には、「金の奴隷」役にヴァーツラフ・ニジンスキーを起用した他、「舞踊、音楽、衣装、デザインの総合芸術が実現した」と誰もが認めるほどの画期的な舞台だったと言います。
『火の鳥』
イワン王子が火の鳥を追っていると、そのうち夜になり、不死身のカスチェイの魔法の庭に迷い込んでしまいました。
王子は火の鳥を見つけ捕まえたものの、火の鳥のあまりの懇願振りに、解放することにしてあげます。
そのとき、火の鳥の魔法の羽根を手に入れるのです。
その後、イワン王子はカスチェイの魔法によって囚われの身となっていたツァレヴナ王女と恋に落ちます。
しかし、夜明けと共にカスチェイが戻って来たので、ふたりは絶体絶命。
捕らえられたイワン王子は、魔法で石に変えられそうになったのですが、そのとき王子は火の鳥の羽根を思い出します。
そして、その羽根を振ると、火の鳥が現れ、カスチェイの命は卵の中にあると教えてくれるのです。
その言葉を信じた王子が卵を壊すと、石にされた人々も元に戻るのでした。
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=BArgz_i815c)
『火の鳥』は、「イワン王子と火の鳥と灰色狼」と「ひとりでに鳴るグースリ」という、2つのロシアの民話が組み合わさってできました。
子ども向けである民話を大人が鑑賞できる重厚なストーリーになるよう、大幅に手が加えられたのです。
『薔薇の精』
初めての舞踏会の高揚感に包まれて微睡んでいる少女の元に、薔薇の精が現れ、彼女を誘って踊り始めます。
夢中で踊っていたふたりでしたが、やがて、薔薇の精は窓から飛び去っていってしまいました。
すべて彼女が見ていた夢の中の出来事であり、薔薇の精とは、彼女が胸に飾っていた薔薇のことだったのです。
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=dOoyL8-Abz4)
フランスの詩人兼小説家のテオフィル・ゴーティエの詩「まぶたを開けて下さい。私は、昨夜の舞踏会であなたが胸につけてくださった薔薇の精です。」を題材にした作品です。
ヴァーツラフ・ニジンスキーが薔薇の精を、タマーラ・カルサヴィナが少女役を演じたこの作品は、バレエ・リュスの人気演目のひとつとなりました。
『ペトルーシュカ』
謝肉祭で賑わう広場で舞台が始まります。
そこにいたのは、ペトルーシュカ、ムーア人、バレリーナの3つのパペット。
命は宿っていません。
しかし、魔術師が魔法を掛けると、途端にパペットに命が宿り、動き出したのです。
ペトルーシュカはバレリーナに想いを寄せますが、ムーア人もまた、バレリーナに恋をしていました。
しかし、ムーア人には敵わず、自身の目の前でふたりは想いを通じ合わせます。
そのやり取りに気付いた魔術師は、ペトルーシュカにムーア人とバレリーナの邪魔をさせますが、失敗。
それだけでなく、刃物を持ったムーア人に追いかけられ、遂には殺されてしまいました。
騒然となった広場の聴衆に対し、ペトルーシュカがただのパペットであると納得させた魔術師でしたが、ペトルーシュカの骸を担いで去ろうとしたとき、屋根の上にペトルーシュカの亡霊が現れ、雄叫びを上げたのです。
魔術師はそれを聞くと恐れおののき、その場を逃げ出していきました。
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=xhJrd-SPJAA)
ロシアの縁日で上演される人形劇「ペトルーシュカ」がモチーフ。
命を持ってしまったために傷ついたペトルーシュカの苦しみや絶望の表現は、人間の葛藤や孤独をも表しています。
また、この作品は、音楽が作られた後、台本が書かれ、最後に振付されるという順序で作られたため、それまでの「振付が先、音楽は後」という伝統を崩したことでも有名です。
初演の際には、ストーリーと音楽の惨さに面食らった観客も少なかったと言います。
ヴァーツラフ・ニジンスキー
フォーキンに続いて、バレエ・リュスの振付を担当したヴァーツラフ・ニジンスキーは、斬新な振付で話題を呼び、バレエ・リュスの人気を高めました。
ダンサーとしての才能も非常に突出していたニジンスキーは、『薔薇の精』でダイナミックな跳躍を見せた後、『牧神の午後』では全く跳ばずに踊ったことで、バレエの表現の幅を広げたのです。
『牧神の午後』
夏の午後、牧神が岩の上で寝そべっています。
そこに現れたのは、水浴びに来た7人のニンフたち。
牧神は彼女たちの気を惹こうとしますが、ニンフたちは近付いてきた牧神を恐れ、逃げ出してしまいます。
そして、残されたニンフのヴェール。
牧神は、それを拾い上げると自身を慰めるのでした。
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=V_LrFJsgmJc)
バレエ・リュスの花形ダンサーだったニジンスキーが始めて振り付けた作品。
古典的なバレエのステップを排除した振付と、常に観客に横を向けたまま動き続ける姿勢は、とても独創的なものでした。
また、初演時には、前代未聞のラストシーンに唖然とした観客たちが、数分間沈黙を続けていたとも言われています。
『春の祭典』
ふたつの村が春を迎え、その対立も収束を迎えましたが、太陽神イアリロは怒りを鎮められませんでした。
そのため、イアリロへと生贄を贈らなくてはならなかったのです。
選ばれてしまったひとりの乙女は、生贄の踊りを踊ります。
しかし、それは死ぬまで永遠に踊り続けなければならないものでした。
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nhPiDQWCHE4)
『ペトルーシュカ』『火の鳥』に続く、ストラヴィンスキーの3大バレエのひとつ。
不協和音や不規則なリズムによって、ストーリーを表現しようとしましたが、初演時には、その是非を巡って暴動が起きたそうです。
また、腰を曲げて歩いたり、立ちつくしたまま動かないようなニジンスキーの振付も、革新的なものとして、観客に衝撃を与えました。
ジョージ・バランシン
バレエ・リュスの最後の振付家であるジョージ・バランシンは、解散後にアメリカに渡って、ニューヨーク・シティ・バレエを結成。
クラシックバレエからマイムを取り除き、音楽と身体の動きだけでの表現を追求する「プロットレス・バレエ」を生み出した他、アメリカ独自のバレエ文化も育てました。
抽象的なバレエを確立したその作風は、「目で見る音楽」とも呼ばれています。
『アポロ』
神アポロの誕生から始まります。
彼は、文芸の女神カリオペ、マイムの女神ポリヒムニア、舞踊の女神テレプシコールを率いて、パルナッソス山に登っていきました。
そうして、芸術の神アポロは成熟していくのです。
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=BbK1rF23FD8)
衣装もストーリーも舞台背景も最小限に留め、ダンサーの身体と音楽だけで作られた、バランシン作品の原点です。
作品の核となる踊りを魅せるシンプルな白いレオタードは、ダンサーの身体やステップの美しさを存分に味わわせてくれます。
また、パ・ダクシオン、パ・ド・ドゥ、ヴァリエーションを構成に入れており、プティパのクラシックバレエへのリスペクトを感じられます。
まさしく、新古典主義と言える作品です。
『シンフォニー・イン・C』
4つの楽章で構成される、ストーリーの無い抽象バレエとなっています。
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=wMVHWGhx1Vo)
バランシンは、自身が振り付けた『水晶宮』を自ら『シンフォニー・イン・C』と改題しました。
大きな変化は、衣装と舞台背景にあります。
宝石をモチーフにした、赤、青、緑、白のカラーを廃し、白と黒のコスチュームに統一し、セットもシンプルなものへと変えました。
また、第2楽章以外、すべて細かく早いテンポのアレグロ進行が続くため、ソリストだけでなく、コール・ド・バレエに至るまで、高い技術が要求される作品です。
モダンバレエを発展させた有名なダンサー
バレエ・リュスを盛り上げたのは、振付家だけではありません。
ダンサーの表現力があったからこそ、モダンバレエは進化を遂げていったのです。
多くのダンサーの中から、知っておきたい6人のダンサーをご紹介します。
イザドラ・ダンカン
ミハイル・フォーキンに多大な影響を与えた、モダンダンサーの先駆け的存在。
窮屈なチュチュやトゥシューズを脱ぎ捨てて裸足で踊る彼女のダンスに魅入られたフォーキンから、今までのバレエには無い動きを加えた革新的な振付を提供されました。
ダンカンの踊りは、物語を伝えるのではなく、心の奥に潜む情緒を自由に表現するものであり、女性の束縛を解き放つものでした。
アンナ・パブロワ
日本でバレエが普及したきっかけとなる『瀕死の白鳥』を代表作に持つバレリーナです。
ディアギレフは彼女とニジンスキーの組み合わせをバレエ・リュスの看板ダンサーに迎えたいと考え、『レ・シルフィード』の公演を実現させました。
自国のロシアに留まらず、世界中を巡り公演を続けることに心血を注いだバレリーナでもあります。
タマーラ・カルサヴィナ
バレエ・リュスの旗揚げの際には脇役を演じていたものの、そのパ・ド・トロワの演技や、急遽代役として立てられた主役の演技が人々の注目を浴び、各国からのオファーが殺到。
ニジンスキーの相手役も数多くこなし、バレエ・リュスの人気を支えたひとりです。
古典的な作品から現代的な作品まで、幅広い役柄をこなす実力が人々を魅了し、『火の鳥』はカルサヴィナの当たり役とも言われています。
ブロニスラヴァ・ニジンスカ
ヴァーツラフ・ニジンスキーの妹。
兄と共にバレエ・リュスに参加し、民族舞踊の要素を取り入れ、躍動感に溢れたリズミカルな動きを多用する踊りを得意とするキャラクターダンサーとして活躍しました。
また、振付家としての才も秀でており、『ボレロ』などの有名作も手掛けました。
ニネット・ド・ヴァロア
バレエ・リュスの公演がロンドンで頻繁に催されるようになると、イギリスではバレエブームが到来。
「自国のバレエ団を作りたい」という気運が高まりました。
そこで、イギリス出身であるニネット・ド・ヴァロアが、帰国後に自身の手でバレエ団を創立。
これが、現在のロイヤル・バレエの礎となったのです。
セルジュ・リファール
バレエ・リュスの末期を支えたのがセルジュ・リファール。
彼は、パリ・オペラ座の芸術監督に就任しました。
数々の改革を行う中で、オペラ座のバレエを立て直したことにより、オペラ座はかつての隆盛を取り戻したのです。
モダンバレエに関するQ&A
ここまで、モダンバレエの歴史やクラシックバレエとの違いをご紹介してきました。
モダンバレエにはモダンバレエならではの魅力があることをわかっていただけたでしょうか?
しかし、実際に始めるためには、現実的な情報が足りないと思います。
ここからは、「モダンバレエを始めたい!」という方からよく聞く質問にお答えしていきます!
Q.①|教室を選ぶときのポイントは?
A.|教室の傾向は、クラシックバレエ or モダンバレエ?
前述した通り、バレエ教室には、クラシック寄りかモダン寄りかに分かれています。
自身やお子さんが学びたいのがどちらか、性格に合っているのはどちらかを踏まえて、教室の傾向を選んでください。
その際、以下の項目を気にしながら、体験レッスンを受けに行くと、より良い選択ができることでしょう。
- 通いやすい立地?
- レッスンにかかる費用は?
- 体験レッスンでの雰囲気は?
- 先生との相性は?
- 年齢や能力に分けたクラス分けがされている?
- バーレッスンを大切にしている?
- 小さな子にトゥシューズを履かせていない?
- プロを目指すための支援や対策は施されている?
- 発表会を観てワクワクした?
Q.②|モダンバレエからクラシックバレエに転向できる?
A.|できる
モダンバレエを習うにしても、クラシックバレエを習うにしても、基礎が大切になることは間違いありません。
発表会ではモダンバレエの振付が多い教室でも、普段のレッスンではバーレッスンなどで基礎をしっかりと身に付けるからです。
つまり、モダンバレエを習っていた人がクラシックバレエに転向することも可能ということ。
同様に、クラシックバレエからモダンバレエに転向することもできます。
クラシックバレエの型から解き放たれて自由に表現することで、感性や芸術性が高まることも考えられるのです。
それぞれのバレエにそれぞれの良さがあるため、同時に習う方もいるくらいなので、どちらかを始めたら、どちらかを習えなくなる、なんていうことは考えなくても大丈夫です。
最初は、より興味を持ったバレエを習うことが上達への近道かもしれません。
Q.③|コンクールを目指すときに必要なことは?
A.|3つのバレエをすべて経験すること
ダンサーの登竜門である「ローザンヌ国際バレエコンクール」でも、クラシック部門の他にコンテンポラリー部門が存在します。
現在、プロを目指すなら、クラシックバレエ、モダンバレエ、コンテンポラリーダンス、すべてのバレエを踊りこなすことが必須となっているのです。
3種類のバレエを同時に学ぶことは難しいと思えるかもしれませんが、様々なバレエを経験することは、新たな気付きに出会うことができるチャンスでもあります。
クラシックバレエの厳格なルールを知ることで、自由な表現の大切さが理解できますし、モダンバレエの自由さを知ることで、基礎の大切さが理解できるからです。
最近では、クラシックやモダンと言ったジャンルにこだわらず、どちらの要素も取り入れた教室もあるので、体験レッスンを受けたり、発表会を見学するのも良いでしょう。
また、習うだけでなく、観ることでも学べることがたくさんありますから、観客としてバレエの鑑賞をすることも、表現の幅を深める良い機会になると思います。
まとめ
クラシックバレエの「当たり前」を壊すことで、革新的なバレエへと成長したモダンバレエは、現在でも進化を続けています。
正解が無いからこそ、果てしなく自分だけの表現を追求することができるという点は、伝統を守り続けるクラシックバレエとの大きな違いです。
ぜひ、モダンバレエを通して、振付家やダンサーの表現力と情熱を直接感じ取ってください。
きっと、自分自身と向き合うことで、新たな自分を見つけられますよ!